射精の頻度は前立腺の健康に関係する?|研究で分かっていることと、本当に大事な検査

射精の頻度は前立腺の健康に関係する?(イメージ写真)

「射精の回数が多い男性ほど、前立腺がんになりにくい」。こんな話を、ネットや週刊誌で見かけたことがあるかもしれません。

健康のためと言われれば、少し前向きな気持ちにもなります。一方で、「若い頃のようにはいかない」「回数を気にすること自体がプレッシャー」と感じる方もいるでしょう。

この記事では、射精の頻度と前立腺の関係について、研究で分かっていることと分かっていないことを分けて整理します。そのうえで、前立腺がんの手術を受けた立場から、回数よりも大事にしてほしいことをお伝えします。

先に結論

  • 射精の回数が多い男性ほど、前立腺がんと診断される人が少ない傾向があった、という海外の追跡調査はある
  • ただし「射精すれば予防できる」と証明されたわけではない。回数を無理に増やす必要はなく、自分のペースでよい
  • 前立腺がんは初期にほとんど症状がない。50歳を過ぎたら、回数よりもPSA検査のほうがずっと大事

前立腺は、射精の「工場」のひとつ

前立腺は膀胱のすぐ下にある、栗くらいの大きさの臓器です。精液の一部である前立腺液をつくり、精子の動きを助けています。射精のとき、前立腺のまわりの筋肉が縮んで、前立腺液を送り出します。

つまり前立腺は、排尿だけでなく射精にも深くかかわる臓器です。だからこそ、「射精の回数が前立腺の健康に影響するのでは」という疑問が、昔から研究の対象になってきました。

研究で分かっていること

よく紹介されるのは、アメリカで医療関係の仕事をする男性たちを長い年月にわたって追いかけた調査です。若い頃や中年期の1か月あたりの射精回数を答えてもらい、その後に前立腺がんと診断されたかどうかを調べました。

その結果、月に21回以上射精していたと答えたグループでは、回数が少ないグループに比べて、前立腺がんと診断される人が少ない傾向が見られました。射精の方法は、パートナーとの性交でも、自慰でも、夢精でもかまわないという数え方です。

なぜそうなるのかは、はっきりしていません。考えられている説としては、次のようなものがあります。

  • 射精によって、前立腺の中にたまった物質が外に出やすくなる
  • 前立腺の細胞の入れ替わりや、血流に何らかの影響がある

どちらも、あくまで「そうかもしれない」という段階の説です。

分かっていないこと(ここが大事)

この種の研究は、「回数が多い人に、がんが少ない傾向があった」という関係を見たものです。「射精したから、がんが減った」という因果関係を証明したものではありません。

たとえば、射精の回数が多い人は、もともと体が元気で、生活習慣がよく、ストレスが少ない人だった可能性もあります。また、自分の過去の回数を正確に覚えている人はそう多くありませんし、回数と健診の受け方の違いが結果に影響していることも考えられます。

ですから、「月21回」をノルマのように考える必要はまったくありません。回数を気にするあまり、性生活がプレッシャーになってしまっては本末転倒です。

また、この話は前立腺がんについてのもので、前立腺肥大症を防げるという話ではありません。頻尿や尿の勢いの低下が気になる方は、50代の頻尿・残尿感と前立腺肥大症の記事もあわせて読んでみてください。

「禁欲は体にいい」も「出さないと体に悪い」も言い過ぎ

海外では、一定期間まったく射精しない「禁欲チャレンジ」が話題になることがあります。集中力が上がる、男らしさが増す、といった声もありますが、医学的にはっきりした裏付けがあるわけではありません。

反対に、「長く射精しないと体に悪い」というのも言い過ぎです。射精しない期間が続いても、多くの場合、精液は夢精などで自然に出たり、体に吸収されたりします。禁欲そのもので病気になるわけではありません。

結局のところ、大切なのは「無理をしない」ことです。性欲や体力には個人差も年齢による変化もあります。回数を増やそうと気負うことも、我慢しすぎて苦しくなることも、どちらも必要ありません。パートナーとのことは、お互いの体調と気持ちを優先して、自然なペースで十分です。

年齢とともに、射精はこう変わる

回数の話をする前に、知っておきたいことがあります。射精そのものも、年齢とともに少しずつ変わっていくということです。

  • 精液の量が減る、勢いが弱くなる
  • 射精までに時間がかかるようになる
  • 一度射精したあと、次に勃起・射精できるまでの間隔が長くなる
  • 射精のときの快感が、若い頃より穏やかに感じる

どれも、多くの男性に起きるごく自然な変化です。若い頃と比べて回数が減るのは当たり前で、それ自体を心配する必要はありません。ただし、変化が急に起きた場合や、痛みなどほかの症状をともなう場合は、次の「受診したいサイン」を確認してください。

また、前立腺がんで前立腺を全部取る手術を受けると、精液をつくる臓器がなくなるため、一般に射精しても精液は出なくなります。それでも、オーガズムの感覚そのものは残ることが多いとされています。手術を控えている方は、こうした変化も含めて担当医に聞いておくと、術後の戸惑いが少なくて済みます。

射精にまつわる「受診したいサイン」

回数よりも気にしてほしいのは、射精のときの体の変化です。次のような場合は、泌尿器科に相談してください。

  • 精液に血が混じる(赤い、茶色っぽい)。一度だけで自然に治まることも多いが、繰り返す、ほかの症状がある、40歳以上の場合は一度受診を
  • 射精のときや後に、下腹部や会陰部(陰のうの裏あたり)、陰茎が痛む
  • 発熱や排尿の痛みをともなう
  • 精液の量が急に減った、ほとんど出なくなった
  • 射精までの時間が極端に短くなった、または射精しにくくなった

前立腺炎や感染症、薬の影響などが隠れていることがあります。前立腺肥大症の薬の中には、射精のときに精液が出にくくなるものもあるので、服用中の薬は医師に伝えてください。

なお、PSA検査の直前に射精すると、数値に影響することがあると言われています。検査の前に控えるよう指示されることもあるので、気になる場合は検査を受ける医療機関に確認しておくとよいでしょう。

私の場合:回数よりも、健診の「要注意」を見てほしい

私は2016年7月に前立腺がんの手術を受けました。がんが見つかったのは、健康診断のPSAがきっかけです。最初の「要注意」は4.2。そこから4.8、6.5と上がっていったのに、私は3年間、泌尿器科に行きませんでした。8.9になって、ようやく受診しました。

放置した理由は単純で、何も症状がなかったからです。前立腺がんの初期は、ほとんど症状がありません。頻尿や排尿の痛みが出るのは、多くの場合もっと進んでからです。

診断はT2c、グリソンスコア3+4=7、中リスク。片側の神経を温存する手術を選びましたが、術後は勃起反応がまったくない時期があり、尿失禁とも長く付き合うことになりました。もっと早く受診していれば、選べる道は広かったかもしれない。それが今も消えない後悔です。

射精の回数の話は、明るい話題として楽しんでもらってかまいません。でも、もし前立腺の健康を本気で気にするなら、まず手元の健診結果のPSAの欄を見てください。詳しくはPSA検査で「要注意」と言われたらに書きました。

前立腺の健康のために、本当にやりたいこと

  • 50歳を過ぎたらPSA検査を受ける:採血だけで済みます。家族に前立腺がんの人がいる場合は、もう少し早めに医師に相談を
  • 「要注意」と言われたら、泌尿器科へ:内科や健診センターではなく、泌尿器科で再検査を
  • 歩く、太りすぎない:血管と体全体の健康は、前立腺の健康にもつながります
  • たばこをやめ、お酒はほどほどに
  • 排尿の変化を見過ごさない:頻尿、勢いの低下、残尿感、血尿は受診のきっかけに

次の場合は、様子を見ずに早めに受診してください。尿がまったく出ない、目で見て分かる血尿が出た、発熱があり排尿や会陰部が痛む、といった場合です。

前立腺の治療を受けたあとや、前立腺の薬を飲んでいる人が、ED治療薬を考える場合は、必ず医師に相談してください。特に、狭心症などで硝酸薬(ニトログリセリンなど)を使っている人は、血圧が急に下がり命にかかわるおそれがあるため使えません。詳しくはED治療薬を使う前に確認したいことにまとめています。

体の変化が気になったときに

射精や勃起の変化は、年齢だけでなく、前立腺の状態や血管、持病、服用中の薬が関係していることもあります。

Bodyagainでは、ED治療や治療薬を検討する前に確認したい15項目を、無料のPDFガイドにまとめています。持病や服用中の薬、医療機関に相談する目安を、ご自身で整理するための一般的な情報です。

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まとめ

射精の回数が多い男性ほど前立腺がんと診断される人が少ない傾向があった、という研究はありますが、射精で予防できると証明されたわけではありません。回数はノルマにせず、自分とパートナーのペースで十分です。精液に血が混じる、射精のときに痛むといった変化があれば泌尿器科へ。そして前立腺の健康を本気で考えるなら、50歳を過ぎたらPSA検査を受け、「要注意」を放置しないでください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断、治療効果の保証、特定製品の推奨を行うものではありません。持病や服用中の薬がある方、体の変化が続く方は、医師または薬剤師へ相談してください。