
「少し飲んだほうが、リラックスしていい感じになる」。そう思って一杯、二杯。気がつけば四杯目。そして肝心なときに、なぜか体がついてこない。お酒好きの男性なら、一度くらいは覚えのある話かもしれません。
シェイクスピアの戯曲にも、酒は欲望をかき立てるが、実行する力を奪う、という意味の台詞があるそうです。四百年以上前から、男たちは同じ失敗をくり返してきたわけです。
この記事では、お酒がなぜ勃起に影響するのか、長く飲み続けたときに肝臓やホルモンに何が起きるのか、そして40代・50代からのお酒との付き合い方をまとめます。お酒で失敗を重ねてきた私自身の話も、少しだけ書きます。
先に結論
- 飲みすぎた夜は、脳と神経の働きが鈍り、勃起しにくくなる。これは一時的なもの
- 多く飲む習慣が長く続くと、肝臓、男性ホルモン、血管、神経、睡眠に負担がたまり、EDが続く原因になりうる
- 肝臓は症状が出にくい臓器。健診の肝機能の数字と、一度は肝炎ウイルスの検査を。お酒をやめられないと感じたら、専門の相談先がある
飲みすぎた夜に「元気が出ない」理由
アルコールには、脳の働きを鈍らせる作用があります。少量なら緊張がほぐれて気分が大胆になりますが、量が増えると、性的な刺激を感じ取って勃起の指令を出す脳と神経の働きそのものが鈍ってきます。
さらに、飲みすぎると眠気や脱水も加わります。「気持ちはその気なのに、体がついてこない」という状態は、ある意味で体の正直な反応です。この場合は、お酒が抜ければ元に戻ることがほとんどです。
問題は、この「一時的」が毎晩のように続いている場合です。
長く飲み続けると、何が起きるのか
1. 男性ホルモンが減る
多量の飲酒が長く続くと、男性ホルモンを作る精巣の働きが落ちることが知られています。性欲の低下、疲れやすさ、筋力の低下などにつながることがあります。
2. 肝臓が弱ると、ホルモンのバランスも崩れる
肝臓は、体に入ったアルコールを分解するだけでなく、ホルモンの処理にもかかわっています。肝臓の病気が進むと、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れ、性欲の低下や勃起の問題、乳房のふくらみなどが表れることがあります。
3. 血管と神経が傷む
飲みすぎは血圧を上げ、体重を増やし、中性脂肪や血糖も乱します。どれも勃起にかかわる血管には負担です。長年の多量飲酒は、手足のしびれなど神経の障害を起こすこともあります。
4. 眠りが浅くなる
寝酒は寝つきをよくするように感じますが、夜の後半の眠りを浅くし、いびきや睡眠中の無呼吸も悪化させます。眠りの質が落ちれば、男性ホルモンにも響きます。
肝臓は「沈黙の臓器」
肝臓は、かなり悪くなるまで症状が出にくい臓器です。「疲れやすい」「お酒が抜けにくくなった」くらいで、はっきりした痛みはありません。だからこそ、健診の数字がほぼ唯一の手がかりになります。
お酒による肝臓の病気
多く飲む習慣が続くと、まず肝臓に脂肪がたまる脂肪肝になります。さらに飲み続けると、肝炎、肝硬変へと進み、肝がんの原因にもなります。脂肪肝の段階なら、お酒を減らしたりやめたりすることで改善が期待できます。
お酒を飲まなくても起きる脂肪肝
「自分はそれほど飲まないから大丈夫」とも言い切れません。食べすぎ、甘いもの、運動不足、肥満でも脂肪肝は起きます。お腹まわりが気になる人は、お酒の量とあわせて食事と体重も見直してください(内臓脂肪と男性ホルモンの記事も参考に)。体重を少し減らすだけでも、肝機能の数字がよくなることがあります。
ウイルス性肝炎も忘れずに
肝臓の病気の原因は、お酒と脂肪だけではありません。B型肝炎やC型肝炎のウイルスも、気づかないうちに肝臓を傷め、肝硬変や肝がんにつながることがあります。
- 肝炎ウイルスの検査は、多くの自治体で受けられます。これまで一度も受けたことがなければ、一度は確認しておきたい検査です
- B型肝炎にはワクチンがあります。C型肝炎は、現在は飲み薬で治療できるようになっています
- B型肝炎は性行為でもうつることがあります。カミソリや歯ブラシの共用も避けましょう
サプリや市販薬でも肝臓は傷む
見落とされがちなのが、健康食品やサプリ、漢方薬、市販薬による肝臓の障害です。「自然由来だから安心」とは限りません。解熱鎮痛薬を決められた量より多く飲む、いくつものサプリを同時に飲む、お酒と一緒に薬を飲む、といった習慣は肝臓に負担をかけます。「精力がつく」とうたう出所の分からない製品にも注意してください。
健診で見ておきたい数字
健診の肝機能の欄には、AST、ALT、γ-GTP(ガンマ・ジーティーピー)といった項目が並んでいます。γ-GTPはお酒の影響を受けやすい数字です。基準値を超えている、毎年少しずつ上がっている、という場合は、お酒の量を見直し、内科で相談してください。腹部の超音波(エコー)検査で、脂肪肝の有無も確かめられます。
40代・50代からの、お酒との付き合い方
量の目安を知る
国の健康づくりの指針では、節度ある適度な飲酒は、1日平均で純アルコール約20g程度とされています。ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合、ウイスキーならダブル1杯がおおよその目安です。ただし、これは「これくらいまでなら飲んでいい」という意味ではなく、少ないほど体への負担は小さくなります。
日本人には、もともとアルコールを分解する力が弱い体質の人が多くいます。少し飲んだだけで顔が赤くなる人は、無理に飲まないことが大切です。年齢とともに酔いやすくなることも覚えておきましょう。
飲み方を工夫する
- 空腹で飲まない。枝豆、豆腐、刺身など、軽いつまみと一緒に
- お酒と同じくらいの水を、合間にはさむ
- 甘いジュースやシロップで割らない
- 飲まない日をつくる
- 寝酒にしない
- 体調が悪い日、薬を飲んでいる日は飲まない
- 飲んだあとに入浴しない、車を運転しない
定年後のお酒に注意
仕事を離れると、時間ができる一方で、人とのつながりや毎日の役割が減り、気分が沈みやすくなることがあります。昼から飲む、量が少しずつ増えている、という変化には注意が必要です。お酒は一時的に気分を軽くしても、飲みすぎれば気分の落ち込みを強めることがあります。散歩や趣味、地域の集まりなど、お酒以外の楽しみを持っておくことが、心と体の両方を守ります。
お酒で失敗を重ねてきた私の話
正直に書きます。私は酒癖がよくありませんでした。お酒で数えきれないほどの失敗を重ね、家族にも迷惑をかけてきました。禁酒を試みたことは一度や二度ではありませんが、付き合いや仕事のストレス、何より自分への甘さから、どれも長続きしませんでした。
転機は、2016年の前立腺がんの手術でした。約3週間の入院中、ベッドの上で「これからの人生で大切にしたいこと」をノートに書き続け、その第一項目に「お酒を辞める」と書きました。退院してから、一滴も飲んでいません。何度も挫折した禁酒が続けられたのは、断酒を続ける人たちの自助グループ(AA)で出会った仲間の存在が大きかったと思っています。
お酒をやめて、家族と素面で向き合う時間が増えたことは、私にとって大きな変化でした。自分ひとりの意志ではうまくいかなくても、支えがあれば続けられることがある。それは、お酒の悩みを抱えている方にお伝えしたいことです。私の10年間の記録は前立腺癌術後ED 10年の全記録に書きました。
「やめたくてもやめられない」と感じたら
次のようなことに思い当たるなら、お酒との付き合い方を専門家に相談するタイミングかもしれません。
- 飲む量を決めても、守れないことが多い
- 朝から、または昼から飲みたくなる
- お酒が切れると、手のふるえ、汗、イライラ、眠れないといった症状が出る
- 家族や周りの人から、飲み方を心配されている
- お酒が原因で、仕事や家庭で問題が起きている
相談先には、アルコール専門の外来がある医療機関や精神科、地域の保健所や精神保健福祉センターがあります。断酒会やAAといった自助グループもあります。長く多量に飲んでいた人が急にやめると、強い離脱症状が出ることがあるので、医療機関に相談しながら進めると安心です。
受診の目安と、何科に行くか
- 健診で肝機能の数字や脂肪肝を指摘された
- 肝炎ウイルスの検査を一度も受けたことがない
- 勃起の変化や性欲の低下が、数か月続いている
- お酒の量を自分で減らせない
肝臓のことは内科や消化器内科、勃起や男性ホルモンの悩みは泌尿器科へ。お酒そのものの悩みは、上の相談先を頼ってください。
次のような症状は、すぐに医療機関を受診してください。意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しないときは救急車(119番)を呼んでください。
- 血を吐いた、真っ黒な便が出た
- 白目や皮膚が黄色い、お腹が急にふくらんできた
- 大量に飲んだあと、意識がぼんやりする、呼吸がおかしい
ED治療薬とお酒
ED治療薬をお酒と一緒に使うと、血圧が下がって、めまいやふらつきが起きやすくなることがあります。飲みすぎた状態では、そもそも薬の助けがあっても思うようにいかないことも多いものです。狭心症などで硝酸薬(ニトログリセリンなど)を使っている人は、一緒に使うと血圧が急に下がり、命にかかわるおそれがあるため使えません。肝臓の病気がある人も、薬の使い方に注意が必要です。必ず医師に相談してください。詳しくはED治療薬を使う前に確認したいことにまとめています。
体の変化が気になったときに
お酒の飲み方の変化は、勃起や肝臓の変化とつながっていることがあります。Bodyagainでは、ED治療や治療薬を検討する前に確認したい15項目を、無料のPDFガイドにまとめています。持病や服用中の薬、医療機関に相談する目安を、ご自身で整理するための一般的な情報です。
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まとめ
お酒は、少しなら気分をほぐしても、飲みすぎれば勃起の力を奪います。多く飲む習慣が長く続くと、肝臓、男性ホルモン、血管、睡眠に負担がたまり、夜の悩みが続く原因にもなります。肝臓は黙って働く臓器なので、健診の数字と肝炎ウイルスの検査で様子を確かめ、飲む量と回数を一段階下げるところから始めてみてください。やめたくてもやめられないと感じたら、ひとりで抱え込まず、専門の相談先や自助グループを頼ってください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断、治療効果の保証、特定製品の推奨を行うものではありません。持病や服用中の薬がある方、体の変化が続く方は、医師または薬剤師へ相談してください。