
「男が浮気をするのは本能だから仕方がない」。昔、飲み屋のカウンターで、こんな言い訳を堂々と語る先輩がいました。たいてい、その数日後には奥さんに頭を下げていたものです。
では、本当に浮気は本能なのか。そして、女性の浮気はどう説明されるのか。この問いに、人間の心の仕組みを進化の歴史から考える「進化心理学」が、いくつかの答えを出しています。
この記事では、浮気をめぐる進化心理学の考え方を紹介しながら、それがどこまで本当で、私たち中高年の夫婦にとって何の参考になるのかを考えます。先にお断りしておくと、浮気を正当化する記事ではありません。
先に結論
- 進化心理学では、男女それぞれに浮気につながりやすい「傾向」があったと説明されるが、あくまで仮説である
- 実際の浮気の理由は、退屈、寂しさ、愛されていない感覚、仕返しなど、ずっと人間くさいものが多い
- 傾向があることと、そうしてよいことは別の話。長年の夫婦にとっての予防策は、会話とふれあい
男の浮気は「たくさん残したい」本能?
進化心理学のよく知られた説明はこうです。男性は、相手が多ければ多いほど、自分の子どもを多く残せる可能性がある。だから男性には、多くの相手を求める傾向が備わった、というものです。
カウンターの先輩の言い分は、ここに乗っかっていたわけです。ただ、この説明には続きがあります。人間の子どもは一人前になるまでに長い時間がかかり、父親が子育てにかかわるほうが、子どもが育ちやすかったと考えられています。つまり、一人の相手と長く連れ添う傾向も、同じくらい「本能」の一部なのです。
では、女性の浮気はどう説明されるのか
女性の浮気について、進化心理学では「二重戦略」という考え方があります。女性は、長く連れ添う相手には誠実さや経済力、子育てへの協力といった「安定」を求める。一方で、短い関係の相手には、見た目の魅力や男らしさといった別の要素に引かれることがある、というものです。
オーストラリアのメルボルン大学とイギリスの研究チームは、異性愛の男女250人あまりに、本来のパートナーと浮気相手をそれぞれ評価してもらいました。その結果、女性は浮気相手を、本来のパートナーより外見の魅力は高く、親としての資質は低く評価する傾向が見られました。「安定の相手」と「魅力の相手」を使い分けているようにも見える、というわけです。
さらに、今の相手に満足できないときに、浮気を通じてより良い相手へ乗り換えようとする、という説明(乗り換え仮説)もあります。
実際の理由は、もっと人間くさい
ところが、同じ研究で浮気の理由を尋ねると、進化の話よりずっと身近な答えが並びました。
- 今のパートナーとの関係に飽きた
- もっとロマンチックな関係がほしかった
- 愛されている、大切にされていると感じられなかった
- 相手に浮気されたので、仕返しをした
これは男女ともに、多くの人が「分かる」と感じる理由ではないでしょうか。浮気の入り口にあるのは、遺伝子の計算というより、寂しさや不満、すれ違いであることが多いのです。
研究者自身も、浮気には進化的な背景があるかもしれないが、だからといって誰もがそうするわけではない、と強調しています。人は本能だけで動く生き物ではなく、価値観や愛情、理性で選択をしています。「本能だから仕方がない」は、科学的にも言い訳としては通らないのです。
進化心理学との上手な付き合い方
進化心理学の説明は、とても分かりやすく、面白いものです。その一方で、次のような点には注意が必要です。
- 「傾向」であって「運命」ではない:集団の平均の話であり、目の前の一人の行動を決めるものではない
- 検証が難しい:何万年も前の祖先の暮らしを、実験で確かめることはできない
- 男女の決めつけに使わない:「男はこう」「女はこう」というレッテル貼りの道具にすると、かえって相手が見えなくなる
つまり、雑学として楽しみつつ、自分の夫婦に当てはめるときは、目の前の相手の気持ちを見るほうがずっと大事です。
長年の夫婦にとっての「浮気予防」
浮気の理由に「愛されていると感じられない」「飽きた」が並ぶなら、裏を返せば、そこに夫婦関係を守るヒントがあります。
- 会話を減らさない:定年前後や子どもの独立後は、夫婦の会話が急に減りやすい時期
- 感謝を言葉にする:長年連れ添うほど、「言わなくても分かる」は通じなくなる
- ふれあいを手放さない:夜の生活が減っても、手をつなぐ、肩をもむといったふれあいは続けられる
- 体の変化を一人で抱えない:勃起の変化や性欲の低下を言い出せず、夫婦の距離が開いてしまうこともある
パートナーが夜を避けるようになった背景には、性交痛や更年期の体の変化があることもあります。責めずに、婦人科・産婦人科への相談を一緒に考えてみてください。浮気や夫婦関係の悩みで心が疲れているときは、夫婦カウンセリングや心療内科を頼るのも一つの方法です。
健康面で知っておきたいこと
中高年でも、性感染症は無関係ではありません。日本では近年、梅毒が増えています。パートナー以外との性的な接触のあとに、陰部のしこりやただれ、発疹、排尿時の痛み、分泌物などが出た場合は、泌尿器科や皮膚科、性感染症の検査を行う医療機関を受診してください。症状が出ないまま感染していることもあるため、不安があるときは検査を受けることが、自分とパートナーを守ることにつながります。
体の変化が気になったときに
夫婦の距離が開く背景に、言い出せない体の変化が隠れていることもあります。勃起の変化が続く場合は、年齢だけでなく、血管や持病、服用中の薬が関係していることもあります。
Bodyagainでは、ED治療や治療薬を検討する前に確認したい15項目を、無料のPDFガイドにまとめています。持病や服用中の薬、医療機関に相談する目安を、ご自身で整理するための一般的な情報です。
登録ページでメールアドレスを入力すると、確認メールをお送りします。メール内の確認URLを押すと登録が完了し、続けてPDFガイドのご案内が届きます。配信はいつでも停止できます。詳細はプライバシーポリシーをご確認ください。
関連記事:
まとめ
進化心理学では、男女それぞれに浮気につながりやすい傾向があったと説明されます。ただ、それはあくまで仮説で、集団の傾向の話です。実際の浮気の理由は、退屈や寂しさ、愛されていない感覚といった、ずっと人間くさいものでした。「本能だから仕方がない」は言い訳になりません。長年の夫婦にとっての何よりの予防策は、会話と感謝とふれあい、そして体や心の変化を一人で抱え込まないことです。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断、治療効果の保証、特定製品の推奨を行うものではありません。持病や服用中の薬がある方、体の変化が続く方は、医師または薬剤師へ相談してください。