
お風呂上がりや夜、布団に入ったときに、股のあたりがむずむずする。下着を替えたばかりなのに、なんとなくニオイが気になる。40代、50代になると、こうした陰部の小さな不調が増えたと感じる人は少なくありません。
場所が場所だけに、人に聞くのも、病院に行くのも気が引けます。ドラッグストアのかゆみ止めでしのいでいる、という方も多いでしょう。ただ、陰部のかゆみやニオイの原因はひとつではなく、原因によって正しい対処はまったく違います。合わない薬を塗って、かえって長引かせてしまうこともあります。
この記事では、男性の陰部のかゆみ・ニオイの主な原因、毎日の洗い方、意外と知られていない「精液アレルギー」の話、そして何科に行けばよいかを順番にまとめます。
先に結論
- 陰部のかゆみの多くは、蒸れやかぶれ、水虫の仲間(いんきんたむし)、カンジダなど、皮膚のトラブルが原因
- 尿道からの分泌物、排尿時の痛み、できものや水ぶくれがあるときは、性感染症の可能性も考えて受診したい
- 自己判断で塗り薬を続けず、1〜2週間たっても良くならないときは皮膚科か泌尿器科へ
陰部は、もともとトラブルが起きやすい場所
股のあたりは、体の中でもとくに条件の悪い場所です。汗をかきやすく、下着で覆われて蒸れやすい。皮膚同士がこすれ、尿や皮脂の汚れもたまりやすい。さらに、陰嚢(玉袋)の皮膚は薄くてしわが多く、刺激に敏感です。
そこに、長時間の座り仕事、夏の暑さ、きつめの下着、太ってお腹や太ももの肉が増えたことなどが重なると、かゆみやニオイが出やすくなります。年齢とともに皮膚の水分や皮脂が減り、乾燥によるかゆみが出ることもあります。
かゆみ・ニオイの主な原因
1. 蒸れ・かぶれ・湿疹
いちばん多いのが、汗や蒸れ、こすれによる皮膚炎です。下着のゴムや素材、洗剤や柔軟剤、ボディソープの香料、コンドームのゴムなどが肌に合わず、かぶれることもあります。赤みやかゆみが、触れた範囲に出るのが特徴です。陰嚢に湿疹ができ、かくほど悪化して治りにくくなるケースもあります。
2. いんきんたむし(股部白癬)
足の水虫と同じカビ(白癬菌)が、股に感染したものです。太ももの付け根から外側に向かって、ふちがはっきりした赤い輪のような湿疹が広がり、強いかゆみが出ます。足の水虫がある人は、タオルや手を介して股にうつすことがあります。
注意したいのは、かゆみ止めとして使われることの多いステロイドの塗り薬を自己判断で塗ると、カビが増えて悪化することがある点です。「かゆいから、とりあえず手元の薬」は避けたほうが無難です。
3. カンジダ(亀頭包皮炎)
カンジダは、もともと皮膚や口の中にいるカビの一種です。体の抵抗力が落ちたときや、蒸れた状態が続いたときに増え、亀頭や包皮が赤くなる、かゆい、白いカスがつく、といった症状が出ます。女性の病気というイメージがありますが、男性にも起きます。
カンジダを何度も繰り返す場合、糖尿病が隠れていることがあります。血糖値が高いと、カビや細菌が増えやすくなるためです。健診で血糖値を指摘されたことがある人は、かかりつけ医にも相談してください。
4. 恥垢(ちこう)と亀頭包皮炎
包皮の内側には、皮脂や古い角質、尿の成分などが混ざった白いカス(恥垢)がたまります。これがニオイの大きな原因です。放っておくと細菌が増え、亀頭や包皮が赤く腫れる亀頭包皮炎につながることがあります。
一方で、気にしすぎて石けんでゴシゴシ洗いすぎるのも、皮膚を傷めて炎症の原因になります。「汚れはためない、でも洗いすぎない」がポイントです。
5. 性感染症
かゆみに加えて、次のような症状があるときは、性感染症も考えます。
- 尿道の先がむずむずする、排尿時にしみる・痛い、うみのような分泌物が出る(クラミジア、淋菌などによる尿道炎)
- ピリピリした痛みのあとに、小さな水ぶくれやただれができる(性器ヘルペス)
- 先のとがった、いぼのようなできものができる(尖圭コンジローマ)
- 陰毛のあたりが強くかゆく、毛の根元に小さな虫や卵のようなものが見える(毛じらみ)
- 痛みのないしこりやただれ、手のひらや体の発疹(梅毒)
性感染症は、症状が軽くても、放っておくとパートナーにうつしたり、長引いたりします。何年も前の接触でも、関係がないとは言い切れません。梅毒については中高年の性感染症(梅毒)の記事で詳しくまとめています。
6. 尿のトラブル
尿もれや残尿で下着がいつも湿っていると、皮膚がふやけてかぶれやすくなり、ニオイも出ます。尿のニオイが強い、濁る、排尿時に痛むといった場合は、尿路の感染症の可能性もあります。
私自身、2016年に前立腺がんの手術を受けたあと、尿失禁でおむつが手放せない時期がありました。尿もれパッドやおむつを使っていると、陰部はどうしても蒸れやすくなります。手術後に限らず、尿もれが気になる方は、こまめな交換と、肌を清潔で乾いた状態に保つことを意識してください。
毎日の洗い方と、蒸れ対策
- ぬるめのお湯で、やさしく洗う:石けんは泡立てて、手でなでるように。タオルでこすらない
- 包皮の内側も洗う:包皮をむける人は、無理のない範囲でむいてお湯で流す。洗ったあとは元に戻す
- 陰嚢のしわ、足の付け根も忘れずに:汗がたまりやすい場所です
- 洗ったら、よく乾かす:湿ったまま下着をはかない
- 下着は通気性のよいものを:締め付けの強いもの、乾きにくい素材は避ける。汗をかいたら替える
- 足の水虫を治しておく:いんきんたむしの「供給元」になります
- 香料の強い製品は控える:ボディソープ、制汗剤、柔軟剤でかぶれることがあります
かゆくても、かきむしらないこと。かくと皮膚が傷つき、そこから細菌が入ったり、湿疹がこじれたりします。爪を短く切っておくのも、地味ですが効果的です。
意外と知られていない「精液アレルギー」
ここからは、少し珍しい話です。性行為のあと、パートナーの陰部が赤く腫れる、かゆい、ヒリヒリする。性病やカンジダを疑って調べても、何も見つからない。そんなときに考えられるもののひとつが、精液アレルギー(精漿過敏症)です。
これは精子そのものではなく、精液の液体部分に含まれるたんぱく質に体が反応するアレルギーです。前立腺から出るたんぱく質が関係していると考えられています。主に女性側に起きるもので、精液に触れてから短い時間で、触れた場所のかゆみや腫れが出るのが典型的です。まれに、じんましんや息苦しさなど全身の症状が出ることもあります。
手がかりになるのは、「コンドームを使ったときは症状が出ない」という点です。精液に触れなければ反応しないためです。性感染症やカンジダと間違われて見逃されていることもあると言われています。
海外では、パートナーが食べたナッツの成分が精液を通じて相手に移り、ナッツアレルギーの反応が出たという珍しい報告もあります。食物アレルギーのあるパートナーがいる場合は、頭の片隅に置いておいてもいい話です。
精液アレルギーが疑われる場合は、パートナーが婦人科やアレルギー科で相談するのが基本です。妊娠を望んでいる夫婦は、不妊治療を行う医療機関にも相談できます。どちらかのせいにする話ではないので、二人で落ち着いて受診先を探してください。
また、男性側でも、射精のあとに風邪のようなだるさや目のかゆみなどが出る「射精後症候群」という珍しい状態が報告されています。射精のたびに同じ症状が繰り返す場合は、泌尿器科で相談してみてください。
受診の目安と、何科に行くか
次のような場合は、市販薬で様子を見続けず、医療機関で相談してください。
- かゆみや赤みが、1〜2週間たっても良くならない、または広がっている
- 市販の薬を塗ったら、かえって悪化した
- 尿道から分泌物が出る、排尿時にしみる・痛い
- 水ぶくれ、ただれ、しこり、いぼのようなできものがある
- 陰嚢や睾丸が腫れている、痛む
- カンジダや湿疹を何度も繰り返す
相談先の目安は次のとおりです。
- 皮膚科:かゆみ、湿疹、赤い輪のような発疹、カンジダが疑われるとき
- 泌尿器科:尿道の症状、亀頭や包皮の炎症、陰嚢の腫れや痛み、性感染症が心配なとき
- 性病科・性感染症内科:性感染症の検査をまとめて受けたいとき
- 婦人科・アレルギー科:パートナーの性行為後の症状(精液アレルギーが疑われるときなど)
受診するときは、いつから、どこが、どんなふうにかゆいか、塗った薬、持病(とくに糖尿病)、服用中の薬をメモしておくと話が早く進みます。恥ずかしがる必要はありません。医師にとっては、毎日見ている「よくある相談」のひとつです。
なお、陰嚢が急に強く痛む、腫れて熱を持つ、高い熱が出ているといった場合は、早めに受診してください。性行為のあとに、パートナーが息苦しさや全身のじんましんを起こした場合は、救急車を呼ぶことも含めて、すぐに医療機関へ。
体の変化が気になったときに
陰部の不調は人に相談しにくいものですが、糖尿病などの持病が隠れていることもあります。Bodyagainでは、ED治療や治療薬を検討する前に確認したい15項目を、無料のPDFガイドにまとめています。持病や服用中の薬、医療機関に相談する目安を、ご自身で整理するための一般的な情報です。
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まとめ
男性の陰部のかゆみやニオイは、蒸れ、かぶれ、いんきんたむし、カンジダなど皮膚のトラブルが原因のことが多く、毎日のやさしい洗い方と蒸れ対策で防げる部分もあります。一方で、分泌物、排尿時の痛み、できものがあるときは性感染症も考えたいところです。手元の薬で長引かせず、良くならなければ皮膚科か泌尿器科へ。パートナーの性行為後の症状には、精液アレルギーという可能性もあることを覚えておいてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断、治療効果の保証、特定製品の推奨を行うものではありません。持病や服用中の薬がある方、体の変化が続く方は、医師または薬剤師へ相談してください。