
「愛情ホルモン」「幸せホルモン」「絆のホルモン」。オキシトシンほど、たくさんのあだ名を持つホルモンも珍しいでしょう。テレビや雑誌では、ハグをするだけで出る、ストレスが消える、夫婦円満になると、まるで万能薬のような扱いです。
とはいえ、50代の男が「よし、オキシトシンを出そう」と妻に抱きつくのは、なかなか勇気がいります。そもそも、このホルモンは本当にそんなに万能なのでしょうか。
この記事では、オキシトシンの正体と、分かっていること・まだ分からないことを整理しながら、長年連れ添った夫婦のふれあいについて考えます。
先に結論
- オキシトシンは脳でつくられるホルモンで、出産や授乳、ふれあいや性行為にかかわっている
- 人と人との絆や安心感に関係すると考えられているが、「万能の愛情ホルモン」と言えるほど単純ではない
- 性行為だけでなく、手をつなぐ、話す、笑うといった日常のふれあいが、夫婦の距離を縮める助けになる
オキシトシンとは何者か
オキシトシンは、脳の視床下部という場所でつくられ、脳の下にある下垂体から血液中に出ていくホルモンです。同時に、脳の中で神経の働きを調整する役目も持っています。
もともと有名なのは、出産と授乳での働きです。お産のときに子宮を収縮させ、出産後は赤ちゃんがお乳を吸う刺激で分泌されて、母乳を押し出します。医療の現場でも、陣痛を促す薬として使われてきました。
つまり、もとは「お母さんのホルモン」として知られていたわけです。それが研究が進むにつれて、男性を含むすべての人の、心や人間関係にかかわっていることが分かってきました。
分かってきたオキシトシンの働き
ふれあいで出る
肌と肌のふれあい、ハグ、マッサージ、見つめ合うことなどで、オキシトシンが分泌されると考えられています。ペットをなでたときに、飼い主と犬の両方でオキシトシンが増えた、という研究も話題になりました。
性行為とオーガズム
オキシトシンは、性行為の最中にも高まり、オーガズムや射精の前後で増えることが報告されています。女性だけでなく、男性でも同じような変化が見られます。性行為のあとに相手への親しみや安心感が深まるのは、このホルモンの働きも一役買っているのかもしれません。
絆と安心感
恋愛の始まりや、親子の結びつき、信頼の気持ちとの関係も研究されています。オキシトシンを鼻から吸った人のほうが、他人を信頼しやすくなった、という実験もよく知られています。ストレスへの反応をやわらげる働きがあるのではないか、とも考えられています。
ただし、「万能の愛情ホルモン」ではない
ここからが大事なところです。オキシトシンの研究は面白い結果が多い一方で、話がだいぶ盛られて伝わっている面もあります。
- 実験の結果が一定しない:鼻から吸わせる実験は、同じ結果が繰り返し確かめられないことも多く、研究者の間でも慎重な見方が広がっている
- 「身内」と「よそ者」を分ける面も:仲間への親しみを強める一方で、仲間以外への警戒心にかかわる可能性も指摘されている
- 男女で働きが違う可能性:アメリカの研究チームは、マウスの脳で、同じ神経回路がオスとメスでは逆向きの働きをすることを報告した。メスでは性的な関心を高め、オスではむしろ抑える方向に働いたという
最後のマウスの研究は、人にそのまま当てはまるかはまだ分かりません。ただ、ひとつのホルモンで「愛が深まる」と言い切れるほど、人の心は単純ではない、ということはよく分かります。
自閉スペクトラム症の人へのオキシトシンの投与も研究されていますが、効果ははっきりしておらず、研究段階の話です。
ネットで売られている「オキシトシン」に注意
海外の通販サイトなどでは、オキシトシン入りをうたうスプレーや、オキシトシンを増やすとうたうサプリが売られていることがあります。オキシトシンは日本では医薬品として扱われる成分で、医師の管理のもとで使うものです。個人輸入の商品は、中身や品質が確かめられないこともあります。「これで夫婦円満」と飛びつく前に、立ち止まってください。
50代夫婦の「オキシトシン習慣」
結局のところ、オキシトシンについて確かに言えそうなのは、「人と人とのふれあいが、心にいい影響を与える」という、昔から知られていることの裏付けです。
長年連れ添った夫婦にとって、性行為だけが絆の証ではありません。体の変化や体調で夜の生活が減っても、ふれあいまで手放す必要はありません。
- テレビを見ながら、肩や足をもんであげる
- 散歩のときに、たまに手をつなぐ
- 「ありがとう」を口に出して言う
- 一緒に笑える時間をつくる
- 夫婦で犬や猫をなでる(これは相手が嫌がりにくい)
いきなりハグは照れくさくても、肩もみくらいなら始められます。相手が嫌がるときは無理をしないこと。ふれあいは、お互いが心地よいと感じてこそ意味があります。
パートナーが性行為を避けるようになった背景には、性交痛や更年期の体の変化があることもあります。その場合は責めずに、婦人科・産婦人科への相談を一緒に考えてみてください。夫婦関係の悩みが続くときは、カウンセリングを利用するのも一つの方法です。
体の変化が気になったときに
夫婦のふれあいが減った背景に、勃起の変化があることもあります。勃起の変化が続く場合は、年齢だけでなく、血管や持病、服用中の薬が関係していることもあります。
Bodyagainでは、ED治療や治療薬を検討する前に確認したい15項目を、無料のPDFガイドにまとめています。持病や服用中の薬、医療機関に相談する目安を、ご自身で整理するための一般的な情報です。
登録ページでメールアドレスを入力すると、確認メールをお送りします。メール内の確認URLを押すと登録が完了し、続けてPDFガイドのご案内が届きます。配信はいつでも停止できます。詳細はプライバシーポリシーをご確認ください。
関連記事:
まとめ
オキシトシンは、出産や授乳、ふれあいや性行為にかかわる、たしかに興味深いホルモンです。ただ、研究の結果は一定しないものも多く、「出せば夫婦円満」という万能の愛情ホルモンではありません。確かなのは、ふれあいや会話が心によい影響を与えるということ。性行為の回数にこだわらず、肩もみや「ありがとう」から、夫婦の距離を少しずつ縮めてみてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断、治療効果の保証、特定製品の推奨を行うものではありません。持病や服用中の薬がある方、体の変化が続く方は、医師または薬剤師へ相談してください。