PSA検査で「要注意」と言われたら——10年前の私が放置して失ったもの

 

これは「健康診断の結果を放置した男」の話です

健康診断の結果用紙の片隅に、小さく「要再検査」と書かれていた。

PSAという項目だった。基準値をわずかに超えていたが、自覚症状は何もない。仕事は忙しい。来年また検査すれば大丈夫だろう——。

そう思って3年間放置した結果、私は前立腺癌と診断され、2016年にロボット支援下前立腺全摘除術(ダヴィンチ手術)を受けました。

もしあのとき動いていれば、もっと選択肢があった。

術後10年が経った今でも、ED治療薬に頼らざるを得ない毎日、尿失禁の後遺症との付き合い、再発への不安——その「もし」を考えない日はありません。

この記事は、当時の私と同じく「PSA値が少し高い、でも症状はないし……」と迷っているあなたに向けて書いています。10年間の経験を、できる限り正直に共有します。詳しい全経緯は本体記事「前立腺癌術後ED 10年の全記録」にまとめてありますが、この記事ではまずPSA検査そのものについてお伝えします。

 

そもそもPSA検査とは何か。基礎知識を3分で

PSAは前立腺が出すタンパク質の値

PSA(前立腺特異抗原:Prostate Specific Antigen)は、前立腺の細胞が作り出すタンパク質です。健康な前立腺からも血液中にわずかに漏れ出していますが、前立腺に異常があるとその量が増えます。

血液検査一本で測れるため、日本では人間ドックや自治体の住民健診のオプションとして広く採用されています。費用は1,000〜3,000円程度。これが、前立腺癌の「最初の入り口」です。

数値の目安と一般的な基準

  • 4.0 ng/mL以下:基準値内(一般成人男性)
  • 4.0〜10.0 ng/mL:グレーゾーン(要精密検査)
  • 10.0 ng/mL以上:癌の疑いが高い

ただし、年齢補正が入る場合もあります。50代なら3.0、60代なら3.5を境にする医療機関もあるため、「4.0以下なら絶対安全」とは言い切れません。

重要なのは、数値そのものより「経年変化」です。

毎年少しずつ上がっている——これが一番のサインです。私の場合、まさにこのパターンでした。

 

私が「要注意」を3年放置した理由、そして失ったもの

2013年——最初の「要再検査」

当時48歳。健康診断のPSAは4.2。基準値をわずかに超えていました。

用紙には「泌尿器科で再検査をおすすめします」と書かれていた。でも、その日は仕事の納期が迫っていて、結果用紙はそのままデスクの引き出しへ。

「症状もないし、来年また測ればいいか」——これが、10年経っても忘れられない判断ミスです。

2014年——4.8。それでも動かなかった

翌年の健診ではPSA 4.8。前年より上昇していたのに、私はまだ「ちょっと高めの男はたくさんいる」「ストレスでも上がるらしい」と自分に言い聞かせていました。

当時はまだ49歳。本業の仕事が忙しい時期で、毎日の業務に追われていました。そして何より——正直に言えば、PSAという数値が何を意味するのか、前立腺癌がどれほど身近な病気なのか、私はほとんど何も知らなかった。「自分はまだ若いし、関係のない世界の話」だと思っていたのです。

無知と若さの過信。これが、放置の最大の理由でした。

2015年——6.5。妻に怒られて、それでも先延ばし

3回目の健診で、PSAは6.5まで上昇。さすがに用紙を見た家族から、早く受診するよう勧められました。

でも、私は予約を入れたきり、診察日を2回キャンセルしました。理由は「韓国出張」。今思えば、本当は怖かったのだと思います。「癌かもしれない」という言葉と向き合いたくなかった。

2016年——8.9。観念して受けた精密検査の結果

4回目の健診でPSAは8.9。妻が予約を取り、半ば強制的に泌尿器科へ連れて行かれました。

MRI、そして生まれて初めての泊まり込み入院での生検。

前立腺を左右に分け、それぞれ8箇所ずつ、合計16箇所から組織を針で採取する——文字で書くと一行ですが、実際に受ける側からすれば、決して軽い検査ではありませんでした。さらに骨シンチで骨転移の有無もチェック。

すべての検査結果が出揃った日、医師から告げられた診断は、

前立腺癌、グリソンスコア 3+4=7、T2c期

「幸いまだ転移はないが、放置すれば数年で命に関わる位置です」と医師に言われた瞬間の、診察室の冷たい空気は今でも覚えています。

ただ、不幸中の幸いがありました。執刀医との相談の結果、片側の勃起神経を温存する判断を下したのです。これは「生検で癌細胞がない側を見つけられたから安全に温存できた」という単純な話ではありません。癌の取り残しによる再発リスクを抱えながらも、残された人生を男として生きていきたい——その思いと向き合った末の、苦しい決断でした。

もし2013年に動いていたら、PSA 4.2の時点なら、選択肢はもっと広かった。

両側神経温存の余地ももっと大きかったでしょうし、監視療法(積極的に治療せず経過観察)という道もあったかもしれない。早く動いていれば、こんな苦しい二択を迫られることもなかったはずです。それでも今、私は以前のようにとはいきませんが、ED治療薬(VINIX、SENTRIP)を身体の状態に合わせて使い分けながら、無理のないペースで夫婦生活を続けられています。あの時の決断と、今の治療薬の存在に、心から感謝しています。

監視療法(積極的に治療せず経過観察)という道もあったかもしれない。神経温存の余地ももっと大きかったはずです。手術や治療法の選択肢については、別記事「神経温存 vs 全摘除——10年後に振り返る私の選択」で詳しく書いています。

 

なぜ多くの男性がPSA要注意を放置するのか。5つの典型パターン

私自身の経験と、PSA要注意を放置する男性には共通のパターンがあります。

① 「症状がないから大丈夫」型

前立腺癌の初期は、ほぼ無症状です。頻尿や排尿痛が出るのは進行してから。「症状がない=健康」という思い込みは、最も危険な誤解です。

② 「仕事が忙しい」型(私はこれでした)

経営者・管理職に多いパターン。半日休めば検査は終わるのに、その半日が捻出できない——いえ、本当は「捻出したくない」。検査結果と向き合うのが怖いから、忙しさを言い訳にしています。

③ 「ネットで調べて安心」型

「PSA 4台 心配ない」で検索して、自分に都合のいい情報だけ拾う。実際にはPSA値の解釈は経年変化、年齢、前立腺体積など複合的に判断するもので、ネット記事一本では判断できません。

④ 「父親も大丈夫だったから」型

家族歴がない=リスクなし、ではありません。むしろ、前立腺癌は家族歴があると2〜3倍リスクが上がりますが、家族歴がない人もたくさん発症します。

⑤ 「精密検査=針を刺される」型

生検(前立腺に針を刺して組織を採取する検査)への恐怖。これは正直、私もありました。ただ、最近はMRI先行の方針も広がっており、いきなり生検にはなりません。

 

PSA要注意と言われた今、すべきこと3ステップ

ステップ1:泌尿器科を予約する(今週中)

内科や健診センターではなく、泌尿器科の専門医がいる施設を選んでください。総合病院でも、個人クリニックでも構いません。「PSA要注意で、再検査をお願いしたい」と電話で伝えればOKです。

「来月でいいか」と思った瞬間、3年が過ぎます。私が証人です。

ステップ2:再検査でPSAを測る

初回のPSA高値は、前立腺炎などの一時的な要因でも起こります。まずは1〜3ヶ月後に再測定し、本当に高値が続いているかを確認します。ここで下がっていれば、ひとまず安心です。

ステップ3:必要なら精密検査(MRI→生検)

再測定でも高値が続く、あるいは経年で上昇傾向なら、MRI検査を受けます。MRIで疑わしい所見があれば生検へ進みますが、何もなければ経過観察で済むこともあります。

ここまで進んでも、「癌が確定する」とは限りません。検査の8割は「癌ではなかった」で終わります。それでも、確認することで安心を得られます。

 

PSA値を悪化させないために日常でできること

生活習慣の見直し

  • 動物性脂肪を減らす(特に赤身肉・乳製品の過剰摂取は前立腺癌リスクと関連の指摘あり)
  • トマト(リコピン)、緑茶(カテキン)、大豆製品(イソフラボン)を意識して摂る
  • 週3回以上の運動(ウォーキングでも可)
  • 禁煙・節酒

性機能の維持も「健康管理」の一部

意外に思われるかもしれませんが、定期的な性的活動が前立腺の健康維持に関連するという研究報告もあります。年齢とともにEDの傾向が出てきた方が、無理なく性生活を維持することは、QOL(生活の質)の維持にもつながります。

私自身、術後10年のED経験から、安全に使える正規ルートのED治療薬を取り扱う個人輸入代行サイト「bodyagain.jp」を運営しています。製造元は韓国の大手OEMメーカーCLPharm社。CialisタイプのSENTRIP(セントリップ)、ViagraタイプのVINIX(ビニックス)を扱っています。

ED治療は「恥ずかしいもの」ではなく、糖尿病や高血圧と同じ慢性疾患の管理です。詳しい使い分けや選び方は「ED治療薬の選び方——サバイバーが10年使って分かったこと」をご覧ください。

 

10年経った今、あの時の自分に伝えたいこと

「忙しい」「大したことない」「来年でいい」その全部が、未来の自分から時間を奪っている。半日でいい、泌尿器科へ行ってくれ。

前立腺癌は、早期発見できれば10年生存率が95%を超える、比較的「治療成績のよい」癌です。だからこそ、PSA検査という入口で見逃すのは、本当にもったいない。

私は手術で命を救われました。執刀医と相談の上、再発リスクを抱えながらも片側の勃起神経を温存する選択をし、今はED治療薬の助けを借りながら夫婦生活を営めています。それでも、性機能・尿失禁の後遺症と10年付き合ってきました。手術の選択肢、神経温存をどこまで攻めるか。すべてはPSAをいつ捕まえたかで変わります。両側温存という、リスクの少ない選択肢も、もっと早ければ手に入れられたかもしれません。

この記事を読んでくれた今日が、あなたにとって「動いた日」になりますように。

術後の生活、夫婦関係、ED治療を含めた包括的な10年の記録は、本体記事「前立腺癌術後ED 10年の全記録」にすべて書いてあります。同じ立場で迷っている方の参考になれば幸いです。

 

よくある質問(FAQ)

Q1. PSA値が4を少し超えたくらいなら、本当に病院に行く必要がありますか?

A. はい、必ず泌尿器科で再検査を受けてください。PSA 4.0〜10.0は「グレーゾーン」と呼ばれ、この範囲の約25〜30%が前立腺癌と診断されます。私自身もPSA 4.2の段階で受診していれば、もっと早く対処できました。1ヶ月後に再測定するだけでも、多くの情報が得られます。

Q2. PSAが高くても癌じゃないことはあるのですか?

A. あります。前立腺肥大症、前立腺炎、激しい運動後、射精後、自転車に長く乗った後などでも一時的にPSAは上がります。だからこそ、最初の高値で慌てず、再測定することが大切です。ただし、再測定でも高値が続く、または経年で上昇している場合は精密検査が必要です。

Q3. 生検(針を刺す検査)は痛くないですか?怖いです。

A. 私の場合、局所麻酔下で12箇所採取しましたが、想像していたほどの痛みはありませんでした。検査自体は20〜30分。直腸経由か会陰経由かで体感が違いますが、いずれも我慢できる範囲です。それより、「検査せず放置して進行する恐怖」のほうがはるかに大きいと、経験者として断言します。最近はMRI先行で、生検が不要なケースも増えています。

Q4. 前立腺癌の手術後、性機能はどうなりますか?

A. 正直に申し上げます。多くの場合、術後しばらくはED(勃起障害)が出ます。神経温存の度合いで予後は大きく変わりますが、神経温存は「安全に決められる選択」ではなく、再発リスクと男としての人生を天秤にかけた苦しい判断になります。私の場合は片側の神経温存を選び、術後はED治療薬の力を借りる毎日です。以前のようにとはいきませんが、VINIXやSENTRIPをその日の身体の状態に合わせて使い分けることで、無理のないペースで夫婦生活を続けられています。大切なのは「自分の身体に合った使い方」を見つけることだと感じています。詳しくは「前立腺癌術後ED 10年の全記録」をご覧ください。

Q5. 健診のPSA測定はオプション扱いですが、毎年受けるべきですか?

A. 50歳以上の男性は、毎年受けることを強くおすすめします。費用は1,000〜3,000円程度。家族に前立腺癌の既往がある方は、45歳から始めてもよいでしょう。一度でも「要注意」が出たら、その後は単年の数値より「経年変化」を必ず確認してください。私の見落としはここでした。

Q6. ED治療薬を使うと、PSA値に影響しますか?

A. PSA値そのものへの影響は基本的にありません。ただし、検査前24時間以内の射精でPSAが一時的に上がることがあるため、PSA採血の前日は性的活動を控えるのが一般的です。ED治療薬の使用と前立腺癌リスクには、現時点で明確な因果関係は認められていません。

 

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この記事を書いた人

bodyagain.jp 運営者

2016年、前立腺癌(T2c期、グリソンスコア7)と診断され、ロボット支援下前立腺全摘除術を受ける。術後ED・尿失禁という後遺症と向き合う中で、「同じ悩みを抱える中年男性に、安全で確かなED治療薬を届けたい」との想いから、2017年6月にED治療薬の個人輸入代行サイトbodyagain.jpを開設。2026年に開設10年目を迎え、自身の体験をもとにサイトを運営している。前立腺癌サバイバーの一人として、検診の重要性を発信し続けている。

※本記事は医学的助言を提供するものではありません。具体的な診断・治療については、必ず泌尿器科専門医にご相談ください。