
晩婚化が進み、40代で父親になる、あるいはこれから子どもを持ちたいと考える男性は、もう珍しくありません。ところが妊活の話になると、話題の中心はどうしても女性の年齢や体のことになりがちです。
実際には、妊娠は二人でするものです。なかなか授からない理由が男性側にあることも、二人の両方にあることもあります。そして男性の体も、年齢とともに少しずつ変わっていきます。「出ているうちは大丈夫」とは、残念ながら言い切れません。
この記事では、40代からの男性の妊活について、精子と年齢の関係、男性不妊の主な原因、精液検査の受け方、生活で気をつけたいこと、そして妊娠中の夫婦生活の注意点までをまとめます。
先に結論
- 不妊の原因は女性だけにあるわけではない。男性も早めに精液検査を受けることが、二人の時間を無駄にしない近道
- 男性も年齢とともに精子の量や質が変わる。ただし、年齢だけで妊娠できないと決まるわけではない
- 熱、たばこ、お酒、肥満、一部の薬は精子に影響しうる。相談先は泌尿器科(男性不妊外来)や不妊治療を行う医療機関
不妊は「女性の問題」ではない
一般に、妊娠を望んで避妊せずに夫婦生活を続けても、一定期間(目安として1年)妊娠しない状態を「不妊」と呼びます。女性の年齢が高い場合などは、もっと早めに相談することがすすめられます。
原因を調べると、女性側だけでなく、男性側に原因がある場合、二人の両方に原因がある場合、はっきりした原因が見つからない場合があります。男性側の要因は決して少なくないとされています。それなのに、女性だけが何度も通院し、男性は検査を受けていない、というケースがいまも見られます。
男性の検査は、女性に比べて体の負担が小さく、短時間で済むものが中心です。妊活を始めたら、あるいは「なかなか授からない」と感じたら、男性も早めに検査を受けることを考えてください。
男性も年齢とともに変わる
女性と違い、男性は高齢になっても精子をつくり続けます。そのため「男に年齢は関係ない」と思われがちです。でも、精子の量や運動の力、精液の量は、年齢とともにゆるやかに落ちていく傾向があります。
また、海外の研究では、年齢が上がるにつれて、精子の遺伝情報に小さな変化(変異)が増えていくことが報告されています。精子は一生つくられ続け、そのたびに細胞分裂を繰り返すため、コピーの小さなミスが少しずつ積み重なると考えられています。
ただし、ここで必要以上に怖がることはありません。こうした変化があっても、ほとんどの場合、健康な子どもが生まれています。「年齢が上がるとリスクは少しずつ上がるが、必ず問題が起きるわけではない」というのが、いまの理解です。大切なのは、先延ばしにしすぎず、自分の状態を知っておくことです。
男性不妊の主な原因
精索静脈瘤
精巣(睾丸)から血液を戻す静脈がこぶのように広がり、血液がよどむ状態です。左側に多く、精巣の温度が上がって精子をつくる働きに影響すると考えられています。男性不妊の原因として比較的よく見つかるもので、手術で治療できることもあります。立っていると陰嚢がもやもやと重い、ミミズがはったような血管が触れる、といったことで気づく人もいます。
精子をつくる働きの低下
ホルモンの異常、生まれつきの体質、過去の病気(おたふくかぜによる精巣炎など)、抗がん剤や放射線治療などで、精巣が精子をつくる力が落ちていることがあります。
精子の通り道の問題
精子はつくられているのに、通り道(精管など)がふさがっていて外に出てこられない状態です。過去の感染症や手術が関係していることもあります。
勃起や射精の問題
EDや射精がうまくいかないことも、妊活では大きな壁になります。とくに「排卵日に合わせなければ」というプレッシャーで、普段は問題ないのにうまくいかなくなる、という人は少なくありません。これは心の負担が大きい話なので、一人で抱え込まず、医師に相談してください。EDの原因と相談先は、EDの主な原因と受診を考える目安でまとめています。
性感染症
クラミジアや淋菌などの感染症が、精子の通り道に炎症を起こすことがあります。症状が軽く、気づかないうちにかかっていることもあります。詳しくは中高年の性感染症の記事をご覧ください。
「無精子症=絶対に無理」ではない
精液検査で精子がまったく見つからない状態を「無精子症」と呼びます。告げられたときのショックは大きいと思いますが、それですぐに「子どもは持てない」と決まるわけではありません。
無精子症には、大きく分けて2つのタイプがあります。精巣では精子がつくられているのに通り道がふさがっているタイプと、精巣で精子がうまくつくられていないタイプです。前者では、通り道を治す手術や、精巣から直接精子を取り出す方法があります。後者でも、精巣の中にわずかにつくられている精子を探して取り出せることがあります。取り出した精子は、顕微授精などに使われます。
どの方法が使えるかは、原因や状態によって違います。あきらめる前に、男性不妊を専門に診ている医師に相談してください。
精液検査を受けてみる
男性の検査の基本は、精液検査です。数日間の禁欲期間をおいて採取した精液を調べ、精液の量、精子の数(濃度)、動いている精子の割合、形などを確認します。
- 結果は体調や禁欲期間によって変わりやすいので、1回の結果だけで判断せず、時期をおいてもう一度調べることがある
- 採取は医療機関の個室で行う場合と、自宅で採取して持参する場合がある(持参のときは温度や時間の指示を守る)
- 必要に応じて、血液のホルモン検査や、陰嚢の超音波検査などが追加される
相談先は、泌尿器科(とくに男性不妊外来)、または不妊治療を行う医療機関です。日本では2022年4月から不妊治療の保険適用が広がり、男性側の検査や治療の一部も対象になっています。年齢や回数などの条件があるため、具体的な内容は受診先で確認してください。
精子のために、生活で気をつけたいこと
精巣を温めすぎない
精巣が体の外にぶら下がっているのは、体の中より少し低い温度のほうが精子をつくりやすいからだと考えられています。暑い日に陰嚢がだらんと伸びるのも、冷やそうとする体の自然な反応です。逆に言えば、熱がこもる状態が長く続くのは、精子にとってうれしくありません。
- 長時間のサウナや熱い長風呂は控えめに
- 締め付けの強い下着やズボンを避け、通気性のよいものを選ぶ
- ノートパソコンを長時間ひざの上に置かない
- 長時間座りっぱなしにならないよう、ときどき立ち上がる
- 長時間の自転車は、圧迫と熱がかかりやすい
たばこ、お酒、体重
喫煙は精子の量や質に悪い影響を与えるとされています。妊活を機にやめるのは、子どもの将来のためにも、自分の血管のためにも、よい選択です。お酒の飲みすぎ、肥満も精子やホルモンのバランスに影響しうるため、量を見直し、体重を少しずつ落とすことを考えましょう。
睡眠、運動、食事
特別なことより、まず基本です。十分な睡眠、ウォーキングなどの適度な運動、野菜や魚、たんぱく質を含むバランスのよい食事。どれも地味ですが、精子をつくる体の土台です。サプリメントについては、効果がはっきりしないものも多く、ほかの薬との飲み合わせもあるので、使う前に医師や薬剤師に相談してください。
薬のことは必ず医師に伝える
注意したいのが、男性ホルモン(テストステロン)を補う治療やサプリメントです。外から男性ホルモンを補うと、体が「もう十分ある」と判断して、精巣で精子をつくる働きが弱まることがあります。元気を出したくて自己判断で使い、かえって妊活の妨げになることもあるので、妊活中は必ず医師に相談してください。ほかにも、一部の薬が精子や射精に影響することがあります。持病の薬は自己判断でやめず、主治医に「妊活中です」と伝えてください。
ED治療薬を考えるとき
妊活中にED治療薬を使うかどうかは、医師と相談して決めることです。ED治療薬は誰でも使えるものではありません。狭心症などで硝酸薬(ニトログリセリンなど)を使っている人は、一緒に使うと血圧が急に下がり、命にかかわるおそれがあるため使えません。心臓の病気、重い肝臓・腎臓の病気、最近の脳卒中や心筋梗塞がある人も、必ず医師に相談が必要です。詳しくはED治療薬を使う前に確認したいことをご覧ください。
妊娠中の夫婦生活、どう考える?
妊娠が分かったあと、「夫婦生活はしてもいいのか」「赤ちゃんに影響はないのか」と迷う男性は多いと思います。一般に、経過が順調な妊娠であれば、妊娠中の性行為そのものが赤ちゃんに害を与えることはないとされています。
ただし、次のような場合は控え、産婦人科の医師に相談が必要です。
- 出血がある、またはお腹の張りや痛みがある
- 破水した、または水っぽいものが漏れている感じがある
- 前置胎盤、切迫早産などと言われている、または医師から控えるよう言われている
- どちらかが性感染症にかかっている、または心当たりがある
感染予防のためにコンドームを使うことも、妊娠中の大事な配慮です。お腹が大きくなってきたら、お腹を圧迫しない姿勢を選ぶなど、妻の体の負担を第一に考えてください。
そしてもうひとつ大切なのが、気持ちの面です。妊娠中は、つわりや体の変化、不安などで、性に気持ちが向かないこともよくあります。逆に、関心が高まる人もいます。どちらも自然なことで、正解はありません。無理に求めたり、断られて不機嫌になったりせず、手をつなぐ、体をさするなど、性行為以外のふれあいも大事にしてください。迷うことがあれば、妊婦健診のときに妻から医師に聞いてもらう、あるいは二人で聞くのもよい方法です。
受診の目安
- 避妊せずに夫婦生活を続けて、1年程度たっても妊娠しない(妻が高齢なら、もっと早めに)
- 陰嚢に腫れや痛み、しこり、こぶのような血管がある
- 勃起や射精がうまくいかない状態が続いている
- 過去に、おたふくかぜによる精巣炎、陰嚢や鼠径部の手術、抗がん剤や放射線治療を受けたことがある
- 男性ホルモンの治療やサプリメントを使っている、または使おうと考えている
相談先は、泌尿器科(男性不妊外来)や不妊治療を行う医療機関です。陰嚢が急に強く痛む、腫れて熱を持つといった場合は、早めに受診してください。妻の体のことは、婦人科・産婦人科で相談しましょう。
体の変化が気になったときに
妊活は、男性が自分の体と向き合うきっかけにもなります。勃起の変化が気になる場合は、年齢だけでなく、血管や持病、服用中の薬が関係していることもあります。Bodyagainでは、ED治療や治療薬を検討する前に確認したい15項目を、無料のPDFガイドにまとめています。持病や服用中の薬、医療機関に相談する目安を、ご自身で整理するための一般的な情報です。
登録ページでメールアドレスを入力すると、確認メールをお送りします。メール内の確認URLを押すと登録が完了し、続けてPDFガイドのご案内が届きます。配信はいつでも停止できます。詳細はプライバシーポリシーをご確認ください。
関連記事:
まとめ
不妊は女性だけの問題ではなく、男性側に原因があることも、二人の両方に原因があることもあります。男性も年齢とともに精子の量や質が変わりますが、年齢だけで決まるものではありません。精液検査は体の負担が小さく、早めに受けるほど二人の時間を大切にできます。精巣を温めすぎない、たばこをやめる、お酒と体重を見直す、薬は医師に相談する。妊娠が分かったら、妻の体と気持ちを第一に。迷ったら、泌尿器科や不妊治療を行う医療機関に相談してください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断、治療効果の保証、特定製品の推奨を行うものではありません。持病や服用中の薬がある方、体の変化が続く方は、医師または薬剤師へ相談してください。