
「腹上死」。昔から週刊誌の見出しや小説にときどき登場する、なんとも言えない響きの言葉です。笑い話のように語られることもありますが、50代、60代になると、ふと「自分の心臓は大丈夫だろうか」と気になる方もいるのではないでしょうか。
実際のところ、性行為中の突然死はどのくらい起きるのか。どんな人が気をつけるべきなのか。もしものとき、どう動けばいいのか。少しまじめに整理してみます。
先に結論
- 性行為中や直後の突然死は、ごくまれ。ただし起きるのは中高年の男性に多く、原因の多くは心臓の病気
- 心臓や血管の持病、飲みすぎ・食べすぎ、慣れない状況などが重なると、負担は大きくなる
- 胸の痛みや激しい頭痛が出たら、すぐ中断して119番。ED治療薬は硝酸薬と一緒に使わない
そもそも、どのくらい起きるのか
海外の研究では、心臓が原因の突然死のうち、性行為の最中や直後に起きたものは、ほんの一部にとどまると報告されています。性生活が命取りになる、というイメージは、話題の印象が先行している面があります。
ただ、起きた例を見ると、中高年の男性が多く、原因としては心筋梗塞などの心臓の病気がいちばん多いとされています。若い世代では、心臓のリズムの異常(不整脈)、心臓の筋肉の病気(心筋症)、大動脈の壁が裂ける病気(大動脈解離)なども原因になります。いずれにしても、もともと持っていた病気が、たまたまそのタイミングで表に出た、と考えるのが自然です。
性行為は、体にとってどのくらいの運動?
心拍数と血圧は、性行為の間、特に絶頂の前後で上がりますが、たいていは短い時間で元に戻ります。体への負担は、よく「階段を2階分ほど早足で上がる」くらいと例えられます。
逆に言えば、階段を上っただけで胸が苦しくなる、息切れがひどいという人にとっては、性行為も同じくらいの負担になるということです。自分の体力の目安として覚えておくと便利です。
負担が大きくなりやすい状況
- 心臓や血管の持病がある:狭心症、心筋梗塞の経験、不整脈、心不全など。高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙も血管の負担を重ねます
- ふだん体を動かしていない:急な運動に体が慣れていない人ほど、負担が大きくなりやすいと言われます
- 飲みすぎ・食べすぎのあと:心臓は消化やアルコールの処理でも働いています。満腹で酔った状態は、条件が重なりやすい
- 慣れない状況での強い緊張や興奮:初めての相手、慣れない場所、時間を気にしながら、といった状況は心拍も血圧も上がりやすい
- 急な温度差:寒い部屋、熱いお風呂の直後など、血圧が大きく動く場面
- 薬の自己判断:出所の分からない「精力剤」や、医師に相談せずに使うED治療薬
心臓だけでなく、脳の血管にも注意
性行為中に突然、頭を殴られたような激しい頭痛が起きた場合、脳の血管が破れるくも膜下出血などのこともあります。性行為に伴う頭痛には心配の少ないタイプもありますが、自分で見分けることはできません。初めての激しい頭痛は、迷わず受診してください。詳しくは性行為中の頭痛の記事で解説しています。
心臓が気になる人が、今日からできること
- 健診を受け、持病の治療を続ける:血圧、血糖、コレステロールの管理が、そのまま心臓と脳の血管を守ります
- ふだんから歩く:日頃から体を動かしている人ほど、急な負担に強いと考えられています
- 飲みすぎ・食べすぎの直後は避ける:ごちそうとお酒のあとは、まず休む
- 寝室と浴室を暖かく:冬場は特に、急な温度差を減らす
- 主治医に聞いてみる:心臓の病気で治療中の人や、心筋梗塞のあとで不安な人は、「性生活を再開してよいか」を主治医に聞いて構いません。医師にとっては珍しい質問ではありません
ED治療薬を使う人が必ず知っておきたいこと
狭心症などで硝酸薬(ニトログリセリンの舌下錠やスプレー、貼り薬など)を使っている人は、ED治療薬を一緒に使うと血圧が急に下がり、命にかかわるおそれがあるため使えません。心臓の病気がある人、最近脳卒中や心筋梗塞を起こした人も、必ず医師の判断が必要です。
もうひとつ大事なのは、ED治療薬を使ったあとに胸の痛みが出たときです。救急隊や医師に、ED治療薬を使ったこと、その種類と時間を必ず伝えてください。胸の痛みの治療で使われることのある硝酸薬を避けるための、大切な情報です。恥ずかしがっている場合ではありません。使える条件や注意点は、ED治療薬を使う前に確認したいことにまとめています。
もしものときの動き方
最中や直後に、次のような症状が出たら、すぐに中断して救急車(119番)を呼んでください。
- 胸の痛み、締めつけ感、圧迫感が続く
- 冷や汗、強い息苦しさ、吐き気
- 意識が遠のく、脈がひどく乱れる
- 突然の激しい頭痛、片側の手足のしびれ、ろれつが回らない
相手が倒れて呼びかけに反応しない、普段どおりの呼吸をしていない場合は、すぐに119番に電話し、指令員の指示に従って胸の真ん中を強く速く押す胸骨圧迫を始めてください。近くにAEDがあれば使います。気まずさは、あとからいくらでも笑い話にできます。命は、そうはいきません。
体の変化が気になったときに
心臓や血管の状態は、勃起の変化とつながっていることもあります。Bodyagainでは、ED治療や治療薬を検討する前に確認したい15項目を、無料のPDFガイドにまとめています。持病や服用中の薬、医療機関に相談する目安を、ご自身で整理するための一般的な情報です。
登録ページでメールアドレスを入力すると、確認メールをお送りします。メール内の確認URLを押すと登録が完了し、続けてPDFガイドのご案内が届きます。配信はいつでも停止できます。詳細はプライバシーポリシーをご確認ください。
関連記事:
まとめ
性行為中の突然死は、ごくまれな出来事です。必要以上に怖がることはありませんが、起きるときには、心臓や血管の持病、飲みすぎ・食べすぎ、急な温度差などが重なっていることが多いと考えられます。健診と持病の治療、ふだんの運動が、いちばんの備えです。ED治療薬は硝酸薬と一緒に使わず、胸の痛みや激しい頭痛が出たら、迷わず119番。安心して楽しむための準備も、大人のたしなみです。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断、治療効果の保証、特定製品の推奨を行うものではありません。持病や服用中の薬がある方、体の変化が続く方は、医師または薬剤師へ相談してください。