
若い頃はあれほど頭の中を占めていたのに、40代、50代になって気づけば、性のことをほとんど考えなくなっている。夫婦の触れ合いも減ったけれど、正直なところ、それほど困ってもいない。
年齢を考えれば自然なことのようにも思えます。実際、性欲が少しずつ落ちていくのは、多くの男性に起きることです。ただ、その中には、体や心からの小さなサインが混じっていることもあります。
この記事では、性に興味がなくなった40代・50代の男性に向けて、考えられる原因、気にしたほうがいいケース、生活でできること、相談先をまとめます。
先に結論
- 年齢とともに性欲がゆるやかに落ちるのは自然なこと。ただし、急に落ちた、ほかの不調も重なっている場合は、体や心のサインかもしれない
- 主な原因は、男性ホルモンの低下、うつやストレス、睡眠不足、肥満や生活習慣病、お酒、薬、勃起への不安、夫婦関係など
- 気になる変化が続くなら、泌尿器科(男性更年期の相談ができるところ)や内科、気分の落ち込みが強ければ心療内科・精神科へ
性欲が落ちるのは「普通」なのか
性欲には個人差が大きく、「この年齢ならこのくらい」という基準はありません。年齢とともにゆるやかに落ちていく人が多い一方で、50代、60代になってもあまり変わらない人もいます。
ですから、「若い頃より減った」こと自体は、心配しすぎなくて大丈夫です。気にしたいのは、次のような場合です。
- ここ1年ほどの間に、はっきりと落ちた
- 性欲だけでなく、疲れやすさ、やる気のなさ、気分の落ち込みも続いている
- 朝立ちも減った、勃起も弱くなった
- 以前は楽しめていた趣味や仕事にも、興味が持てなくなった
こうした変化が重なっているときは、性欲の低下は「年のせい」ではなく、体や心の状態を映していることがあります。
性への関心と健康の関係
国内の大学が、40歳以上の男女を数年にわたって追いかけた調査では、性への関心がないと答えた男性は、関心がある男性に比べて、その後に亡くなる人の割合が高い傾向が報告されています。女性では、はっきりした関係は見られなかったそうです。
ただし、これは「性に関心を持てば長生きできる」という意味ではありません。研究者は、性への関心がない男性には、笑う機会が少ない、ストレスが強い、生きがいを感じにくい、といった特徴が重なっていたことを指摘しています。性への関心は、それ自体が健康を左右するというより、心と体の元気さを映す「バロメーター」の一つと考えるのがよさそうです。
考えられる主な原因
1. 男性ホルモン(テストステロン)の低下
男性ホルモンは、性欲のスイッチにかかわっています。40代以降は少しずつ減るのが普通ですが、減り方には個人差が大きく、ストレスや肥満、睡眠不足などで大きく落ちる人もいます。性欲の低下に加えて、疲れやすさ、筋力の低下、イライラ、気分の落ち込み、集中力の低下などが重なっている場合は、男性更年期(加齢男性性腺機能低下症候群)が関係していることがあります。詳しくはテストステロンの記事もご覧ください。
2. うつ、ストレス、燃え尽き
うつ病では、楽しみや興味を感じる力そのものが落ちます。性欲の低下は、その一つの表れです。仕事の重圧や家庭の悩みが長く続くと、性のことを考える余裕がなくなるのも自然なことです。
3. 睡眠不足と睡眠の病気
男性ホルモンは、眠っている間に多くつくられると考えられています。睡眠が短い、浅い状態が続くと、性欲にも響きます。大きないびきや睡眠中の呼吸停止を指摘されたことがあるなら、睡眠時無呼吸症候群の可能性もあります。
4. 肥満と生活習慣病
お腹まわりの内臓脂肪が増えると、男性ホルモンが減りやすくなると言われています。糖尿病や高血圧などの生活習慣病も、性欲や勃起に影響することがあります。
5. お酒
少量のお酒は気分をほぐしますが、毎日の深酒は、男性ホルモンにも勃起にも眠りにもよくありません。
6. 服用中の薬
抗うつ薬、一部の血圧の薬、前立腺の病気に使う薬の一部、胃薬の一部などは、性欲や性機能に影響することがあります。気になるときは、処方した医師や薬剤師に相談してください。自己判断で薬をやめるのは危険です。
7. 勃起への不安
うまくいかなかった経験が続くと、「また失敗したら」という不安から、性のことを考えないようにしてしまうことがあります。性欲が落ちたのではなく、実は不安で避けている、というケースです。
8. 夫婦関係やマンネリ
関係がぎくしゃくしている、会話が減った、相手を異性として意識しにくくなった。こうした関係の要因も、性欲に影響します。これは誰かが悪いという話ではなく、長い関係では自然に起こりうることです。
9. 病気や手術のあと
がんの治療や手術、心臓の病気のあとなどは、体力や気持ちの面で、一時的に性欲が落ちることがあります。
私の場合:術後、性欲そのものが落ちた時期があった
私は2016年に前立腺がんの手術を受けました。術後は勃起反応がまったくなく、朝の生理現象すらない状態でした。加えて、術後3〜6か月ほどは、性欲そのものが落ちる時期がありました。焦る気持ちもありましたが、この時期は手をつなぐ、隣で過ごすといった性以外の触れ合いを大切にすることで、焦りを少しずつ減らせました。
体の変化に、気持ちがついていかない時期は誰にでもあります。私の場合は手術という分かりやすい理由がありましたが、理由が見当たらないまま性欲が落ちているなら、体のどこかで何かが変わっている可能性があります。私の10年の経過は前立腺がん術後ED 10年の全記録に書いています。
自分でできるチェック
当てはまるものを数えてみてください。医療機関で相談するときのメモにもなります。
- 性欲の低下が、ここ数か月以上続いている
- 朝立ちが減った、勃起が弱くなった
- 疲れやすい、やる気が出ない
- 気分が沈む、楽しいと感じることが減った
- 眠りが浅い、大きないびきを指摘される
- お腹まわりが太くなった、健診で血糖・血圧・脂質を指摘された
- お酒を毎日飲む、量が多い
- 抗うつ薬、血圧の薬、前立腺の薬などを飲んでいる
今日からできること
- 眠りを確保する:まずは6〜7時間を目安に。寝る直前のスマホとお酒を控えます
- 体を動かす:ウォーキングなどの有酸素運動に、スクワットなどの筋トレを少し。体を動かすことは、気分にもよい影響があります
- お腹まわりを減らす:食べすぎと間食を見直すだけでも違います
- お酒を控え、たばこをやめる:血管にも、ホルモンにも、眠りにも関係します
- 楽しみと人とのつながりを持つ:趣味、友人、地域の集まり。目標や楽しみがあることは、心の元気につながります
- 触れ合いを残しておく:性欲がなくても、手をつなぐ、隣に座るといった触れ合いは続けられます
パートナーにどう伝えるか
夫の性欲が落ちると、妻は「自分に魅力がなくなったのでは」と受け取ることがあります。実際には体の変化やストレスが原因でも、何も言わずに距離を置くと、誤解が積み重なってしまいます。
「最近疲れていて、そういう気持ちになりにくい。あなたのせいではない」と、一言伝えるだけでも違います。必要なら「一度病院で診てもらおうと思う」と話してみてください。妻の側にも更年期などの変化がある年代です。お互いの体の話として話せると、関係はむしろ近くなります。
受診の目安と、何科に行くか
- 性欲の低下に、疲れやすさ、気分の落ち込み、勃起の変化などが重なって続いている → 泌尿器科(男性更年期の相談ができるところ)、かかりつけの内科
- 気分の落ち込みや、楽しめない状態が2週間以上続いている → 心療内科・精神科
- 大きないびき、睡眠中の呼吸停止、日中の強い眠気 → 内科や睡眠の相談ができる医療機関
- 薬を飲み始めてから変化が出た → 処方した医師や薬剤師
男性ホルモンの値は血液検査で調べることができます。ホルモンを補う治療が検討されることもありますが、前立腺の状態などを確認したうえで医師が判断するもので、誰にでも行えるものではありません。
「消えてしまいたい」と感じるほどつらいときは、一人で抱えず、すぐに医療機関や公的な相談窓口に連絡してください。
ED治療薬は「性欲を高める薬」ではない
よく誤解されますが、ED治療薬は勃起を助ける薬で、性欲そのものを高める薬ではありません。性欲が落ちている原因が別にあるなら、そちらを確かめることが先です。また、狭心症などで硝酸薬を使っている人は、ED治療薬と一緒に使うと血圧が急に下がり命にかかわるおそれがあるため、使えません。詳しくはED治療薬を使う前に確認したいことをご覧ください。
体の変化が気になったときに
性欲の低下とあわせて、勃起の変化が気になり始める方も少なくありません。勃起の変化が続く場合は、年齢だけでなく、血管や持病、服用中の薬が関係していることもあります。
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まとめ
性に興味がなくなるのは、年齢とともに多くの男性に起きることです。ただ、急に落ちた、疲れや気分の落ち込み、勃起の変化が重なっているときは、男性ホルモン、うつ、睡眠、生活習慣病、薬などのサインかもしれません。眠り、運動、お酒を見直しつつ、気になる変化が続くなら、泌尿器科や内科、心療内科に相談してください。性への関心は、心と体の元気さを映す鏡の一つです。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断、治療効果の保証、特定製品の推奨を行うものではありません。持病や服用中の薬がある方、体の変化が続く方は、医師または薬剤師へ相談してください。