
射精の瞬間、頭の中が真っ白になる。あの感覚を、言葉でうまく説明できる人はあまりいません。では、そのとき脳の中では、実際に何が起きているのでしょうか。
この素朴な疑問に、筑波大学などの国際研究チームが、最新の技術で迫りました。調べた相手はマウスですが、脳の中の物質が、まるでリズムを刻むように動いている様子がとらえられたのです。
この記事では、この研究を入り口に、性と脳の関係、そして「勃起は脳から始まる」という、40代・50代にも身近な話までをまとめます。
先に結論
- マウスの研究で、性行動の最中、脳の「やる気と快感」にかかわる場所で、2つの物質がリズムよく交互に動くことが分かった
- 射精の直前にはドーパミンがいったん下がり、射精の瞬間に一気に増えていた
- 性の反応は脳から始まる。だからこそ、ストレスや気分、薬が、勃起や射精にも影響する
脳の中の「ダンス」を見た研究
研究チームが注目したのは、脳の奥にある「側坐核(そくざかく)」という場所です。やる気や快感、ごほうびを感じる仕組み(報酬系)の中心的な場所の一つです。
ここで働く2つの物質の動きを、光るセンサーを使ってリアルタイムで観察しました。
- ドーパミン:やる気や快感、「もっと欲しい」という気持ちにかかわる物質
- アセチルコリン:神経の情報を伝える物質の一つで、ドーパミンの出方の調整役も担う
観察の結果、性行動が始まる直前には、まずアセチルコリンがリズムを刻むように出始め、数秒遅れてドーパミンがそれを追いかけるように出てきました。行為が始まると、2つの物質はマウスの動きに合わせて、増えたり減ったりを繰り返しました。
そして、射精の直前にはドーパミンがいったん下がり、射精の瞬間に一気に増える。まさに「クライマックスの合図」のような変化が見られたのです。研究者は、脳の中に性の反応をつかさどる化学的なリズムがあることを示す、重要な手がかりだとしています。
2つの物質が掛け合いながら盛り上がっていく様子は、ちょっとした社交ダンスのようです。本人(本ネズミ)は、そんなことはつゆ知らず夢中なわけですが。
人の脳ではどうなっているのか
人の脳を画像で調べた研究でも、オーガズムのときには、報酬系をはじめ、脳の広い範囲が活発になることが報告されています。一方で、判断や自制にかかわる脳の一部の働きが下がる、という報告もあります。射精の瞬間に頭が真っ白になるのは、理性がちょっとだけ席を外しているから、なのかもしれません。
そして射精のあとは、興奮の主役だった物質が落ち着き、満足感や眠気が訪れます。いわゆる「賢者タイム」です。これについては、賢者タイムの記事で詳しく書いています。
恋をしたときの脳も、同じ仕組みを使う
性行為のときだけではありません。人を好きになったときも、脳の報酬系は活発になります。好きな人のことが頭から離れない、会えるとうれしくてたまらない。あの気持ちには、ドーパミンが深くかかわっていると考えられています。
さらに、ふれあいや性行為で増える「オキシトシン」や、絆にかかわるとされる「バソプレシン」といったホルモンも、相手との結びつきを支えていると考えられています。恋も性も、脳にとっては一続きの化学反応なのです。
「勃起は脳から始まる」という大事な話
この研究から、40代・50代の私たちが受け取りたいメッセージがあります。それは、性の反応は脳から始まる、ということです。
性的な刺激を受けると、脳から神経を通じて指令が出て、陰茎の血管が広がり、血液が流れ込んで勃起が起こります。射精も、脳と脊髄の神経の連携で起こる反応です。つまり、脳の状態が変われば、勃起や射精も変わりうるのです。
- ストレスや緊張:「うまくいくだろうか」という不安そのものが、勃起を妨げることがある
- 気分の落ち込み:うつ状態では、性欲や快感が感じにくくなることがある
- 一部の薬:抗うつ薬などの一部は、射精しにくくなる、性欲が落ちるといった影響が出ることがある
- お酒:飲みすぎると、脳と神経の伝達が鈍くなり、勃起も射精もしにくくなる
研究チームは、今回の成果が将来、EDや早漏など性機能の悩みの新しい治療法の開発につながる可能性があると期待しています。もっとも、マウスでの基礎研究なので、実際の治療に結びつくまでには、まだ時間がかかりそうです。
こんなときは相談を
- 勃起の硬さや持続の変化が続く → 泌尿器科、ED外来、かかりつけ医へ
- 射精が早すぎる、または射精できない状態が続き、悩んでいる → 泌尿器科へ
- 薬を飲み始めてから性欲や射精に変化が出た → 自己判断でやめず、処方した医師に相談
- 気分の落ち込みや眠れない状態が2週間以上続く → 心療内科や精神科へ
ED治療薬を考える場合、狭心症などで硝酸薬(ニトログリセリンなど)を使っている人は使えません。必ず医師に相談してください。
体の変化が気になったときに
勃起は脳と血管と神経の共同作業です。勃起の変化が続く場合は、年齢だけでなく、血管や持病、服用中の薬が関係していることもあります。
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まとめ
筑波大学などのマウスの研究で、性行動の最中、脳の報酬系では2つの物質がリズムよく掛け合い、射精の瞬間にドーパミンが一気に増えることが分かりました。射精の瞬間の「頭が真っ白」には、脳の中のこうした化学反応がかかわっています。性の反応は脳から始まるからこそ、ストレスや気分、薬やお酒が、勃起や射精にも影響します。変化が続くときは、一人で抱えず医療機関に相談してください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断、治療効果の保証、特定製品の推奨を行うものではありません。持病や服用中の薬がある方、体の変化が続く方は、医師または薬剤師へ相談してください。