
朝、妻から「ゆうべのこと、覚えてないの?」と言われる。まったく身に覚えがないのに、夜中に自分が性的な行動をとっていたらしい。にわかには信じがたい話ですが、こうした睡眠中の行動には、ちゃんと名前があります。
「セックスソムニア」。眠ったまま、本人の意思とは関係なく性的な行動をとってしまう睡眠障害です。寝言や夢遊病の仲間だと言えば、少しイメージしやすいかもしれません。
笑い話のようでいて、本人にもパートナーにも深刻な悩みです。正体と対策、相談先をまとめます。
先に結論
- セックスソムニアは、深い眠りから脳の一部だけが中途半端に目覚めて起きる「睡眠中の異常行動」のひとつで、本人は覚えていない
- 性欲が強いから起きるわけではない。睡眠不足、ストレス、お酒、睡眠時無呼吸などが引き金になる
- パートナーの安心と安全のためにも、ひとりで抱えず、睡眠外来などで相談を
セックスソムニアとは
眠っている間に起きる異常な行動をまとめて「パラソムニア(睡眠時随伴症)」と呼びます。夢遊病(眠ったまま歩き回る)や、夜中に突然叫んで飛び起きる夜驚症などが、その仲間です。
セックスソムニアも、このパラソムニアのひとつです。深い眠りのさなかに、脳の一部だけが目覚めたような状態になり、体が勝手に動きます。行動はさまざまで、寝ながら体を触る、隣で寝ている人に性的に近づく、性的な言葉を口にする、といったものが報告されています。
特徴は、本人がまったく覚えていないことです。目は開いていることもあり、周りからは起きているように見えることもあります。でも本人の意識はなく、自分の行動をコントロールできません。そのため、ほとんどの場合は、パートナーや家族からの指摘で初めて気づきます。
男性に多いと言われていて、女性に比べて行動がはっきりした形で出やすい傾向があるとも報告されています。
性欲の強さとは関係ない
ここは誤解されやすいところです。セックスソムニアは、たまっているから起きる、欲求不満だから起きる、というものではないと考えられています。あくまで、眠りの仕組みがうまく切り替わらないことで起きる、睡眠の問題です。
本人を責めても、本人が自分を責めても解決しません。眠りの問題として向き合うことが必要です。
起きやすくなる条件
はっきりした原因はまだ分かっていませんが、次のようなものが引き金になりやすいとされています。
- 睡眠不足、不規則な睡眠
- 強いストレス、疲れ
- 寝る前のお酒
- 睡眠時無呼吸症候群(いびきや呼吸の止まりで、眠りが何度も中断される)
- 一部の睡眠薬などの薬
- 夜中の物音や、隣で寝ている人の動きなど、眠りを浅くする刺激
もともと寝言や夢遊病などがある人に起きやすいとも言われています。逆に言えば、眠りを整えることで、起きる回数が減ることもあります。
似ているけれど別物:夢を「演じてしまう」睡眠障害
50代、60代の男性に知っておいてほしいのが、「レム睡眠行動障害」という別の睡眠障害です。こちらは、夢を見ている浅い眠り(レム睡眠)のときに、夢の内容に合わせて体が動いてしまうものです。誰かと争う夢を見て、大声を出したり、手足を激しく動かしたりして、隣で寝ている人をけがさせてしまうことがあります。
セックスソムニアとの違いは、夢の内容を覚えていることが多い点です。また、レム睡眠行動障害は、のちに脳や神経の病気と関係することがあると考えられています。寝ている間に暴れる、大声で叫ぶといったことを指摘されたら、性的な行動かどうかにかかわらず、一度相談してください。
どうやって診断する?
本人に記憶がないため、診断は簡単ではありません。睡眠外来では、まず本人とパートナーから、どんな行動がどのくらい起きるかを聞き取ります。
必要に応じて、病院に一晩泊まって、脳波や呼吸、手足の動きなどを記録しながら眠る検査(睡眠ポリグラフ検査)が行われます。ただ、検査の夜に限って何も起きないことも少なくありません。
今日からできる対策
- 睡眠時間を確保し、寝る時間と起きる時間をそろえる
- 寝る前のお酒を控える
- いびきが大きい、呼吸が止まると言われたら、睡眠時無呼吸の検査を受ける
- 寝室を静かで、暗く、快適な温度に保つ
- 症状が落ち着くまで、寝る場所を分ける、ベッドの間を空けるなどを検討する
睡眠薬などを自己判断で使ったり、やめたりするのは避けてください。薬の種類によっては、かえって睡眠中の異常な行動を起こしやすくすることもあります。いま飲んでいる薬がある場合は、処方した医師に相談しましょう。
パートナーのことを、いちばんに考える
セックスソムニアでいちばんつらい思いをしているのは、実はパートナーかもしれません。相手は眠っていて覚えていないとはいえ、同意のない性的な行動を受けるのは、怖く、不快なものです。眠れなくなったり、相手を信じられなくなったりすることもあります。
パートナーの気持ちを軽く扱わず、「覚えていないから仕方ない」で済ませないこと。症状が落ち着くまで寝室を分けるのは、関係が冷めたからではなく、お互いを守るための前向きな工夫です。パートナー自身の心の負担が大きい場合は、パートナーも一緒に受診したり、相談したりしてかまいません。
旅行や出張などで家族以外の人と同じ部屋で眠る機会がある場合は、事前に医師と対策を相談しておきましょう。
相談先
相談先は、睡眠外来(睡眠障害の専門外来)が第一の選択肢です。近くにない場合は、精神科、心療内科、脳神経内科、またはかかりつけ医に相談し、紹介してもらうとよいでしょう。いびきや無呼吸がある場合は、睡眠時無呼吸を診ている内科や耳鼻咽喉科でも相談できます。
受診のときは、行動を見ているパートナーの話がとても役に立ちます。一緒に行くか、気づいたことをメモにしておいてください。
なお、睡眠中の行動で自分や周りの人がけがをした場合、夜中に家の外へ出てしまう場合などは、早めに受診してください。
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まとめ
セックスソムニアは、深い眠りから脳の一部だけが中途半端に目覚めて起きる、睡眠中の異常行動のひとつです。性欲の強さとは関係なく、睡眠不足、ストレス、お酒、睡眠時無呼吸などが引き金になります。本人を責めても解決しません。睡眠を整え、必要なら寝室を分け、睡眠外来などで相談を。そして何より、不安な思いをしているパートナーの気持ちを大切にしてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断、治療効果の保証、特定製品の推奨を行うものではありません。持病や服用中の薬がある方、体の変化が続く方は、医師または薬剤師へ相談してください。